【50歳を超えて思うこと】私にとってのFIREとは?失敗も含めて歩んできたキャリアと“コーストFIRE”
50歳を過ぎた今、ふと立ち止まって考える。
私は「仕事が好きだ」と、心から思える。
もちろん、最初からそんな風に思えたわけではない。むしろ、最初のキャリアの選択は完全に失敗だった。
初任給という“単純な物差し”で選んだ最初の企業
学生時代、私は勉強もそこそこに就活を迎えた。そして、深く考えずに「初任給が高い」という理由だけで最初の企業を選んでしまった。
結果は、いわゆるブラック企業だった。理不尽な上司、終わりの見えない残業、評価されない頑張り。
逃げ出したい一心で、必死に勉強を始めた。それが、私のキャリアの本当のスタートだったと思う。
30歳を超えてからの「お金だけでは選ばない」働き方
転職を経て、良き上司と出会えたことが私の人生の転機だった。信頼され、任せてもらえる環境の中で成長できた。
そしてUSCPA(米国公認会計士)という資格にも挑戦し、無事取得。そこからは海外での採用や人事にも関わるようになり、視野が一気に広がった。
30代半ばでは、給与は二の次にしてスタートアップに飛び込んだ。経営企画責任者としてIPOも経験し、後には上場企業の取締役も任された。
もし、若い頃の私のように“お金だけ”を基準にしていたら、このような経験は絶対にできなかったと思う。
FIREではなく「コーストFIRE」という生き方
ここ数年、FIRE(経済的自立と早期リタイア)という言葉をよく耳にする。私自身も、一定の資産形成はできている。
けれど、完全リタイアにはあまり魅力を感じない。なぜなら、今でも仕事が楽しいから。
私にとってしっくりくるのは「コーストFIRE」という考え方だ。ある程度の資産があり、生活のためには働かなくていい。でも、好きな仕事を自分で選んで続ける。
スタートアップの支援や若手へのアドバイス、そんな「誰かの役に立つこと」に関われるのなら、働くことが喜びになる。
有給を消化しない退職。恩返しの気持ちで働く
私はこれまでの転職で、有給休暇を使い切って辞めたことが一度もない。
それは、「起業する能力がない自分を雇ってくれた会社に、最後まで恩返しをしたい」という気持ちがあったからだ。
どんなに忙しくても、最後の日まで誠実に働く。そんな姿勢があったからか、転職は何度も経験しているが、大きなトラブルはほとんどなかった。
資格を取得し、実務を重ねることで自信がついた。その安心感が、穏やかな人間関係や信用をもたらしてくれたのだと思う。
隣の芝生は本当に青いのか?
FIREを達成した人、自由な働き方を謳う人の投稿をSNSでよく見る。
けれど私は思う。「隣の芝生はそんなに青くない」。
大切なのは、目の前の仕事に丁寧に向き合い、信用を積み上げていくことではないだろうか。
資格やスキルだけでなく、「どんな場でも信頼される働き方」が、結局は一番の資産になる。
感謝と満足。そして、これから
私は強欲ではないと思う。今の環境に感謝し、与えられた仕事に満足している。
FIREのように、全てを手放す人生も悪くない。でも私は、これからも自分らしく働き続けたい。
それが、寅ちゃん流の「コーストFIRE」なのだ。